Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

You and I

 今年もお誕生日がやってきた。
 44回目でゾロ目だワーイ…じゃないよ。例年誰が喜んでくれるわけでもなく、特にこれといっておめでたいことはない、と思ってきた。しかし四十路も越えると自分にも周囲にも老いの影が忍び寄り…ましてやこのような世情である。また1年間生かされ、生き長らえたという幸運に対して、せめて自分くらいは自分に対して感謝の念をもって祝福してやろうじゃないか、という気持ちがふつふつと湧いているのが近年である。小心者でバグだらけの欠陥品=それが私ではあるが、それでも「自分よ、いつもありがとう」などと1年に1度くらいはそっと労ってやりたい気分なのである。
 そして相棒よ、また1年間どうかよろしく頼もう。
 
 昨晩は麻婆シビ辛豆腐、春キャベツのコールスロー、春キャベツと豚バラ肉のピリ辛蒸しを頂いた。麻婆豆腐は絶妙なシビ辛さと複雑な味わいで今年一の出来栄えであった。甘みある春キャベツと青ネギをワッシと頂き至福のディナーであった。
 

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 ただし残念ながら1点だけケチがついてしまった。ピリ辛蒸しを頂いている最中、何度か微細なアルミっぽい味を感知したような気がしていた。調べてみるに、どうもタレに使用した「お酢」によってアルミ素材の成分が溶け出すことはよくある現象のようで、どうやらその違和感だったようである。個人的にアルミトレーは軽量で丈夫で洗いやすいため重宝していたのだが、全く意識してこなかっただけに今さらながらゾッとしている(通常は微量でありすぐに体外へと排出されてしまうらしいが)。
 それにしてもお酢の底知れないポテンシャルを伺わせるエピソードでもあるな。世の中にはまだまだ私ごときが知らないことだらけである。
 
 Dennis Wilson『Pacific Ocean Blue』(1977年)でも聴いちゃうんだからね。
 というわけで私と同じく1977年産の作品である。1983年に39歳の若さで「泥酔して溺死」という夭逝ぶりであり、世間からは兄であり神童=Brian Wilsonの影に隠れがちな人生かと思いきや、なかなかどうしてこのソロ作はじんわり味わい深いものがあり、個人的には今や愛聴盤となっている。
 

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 D. Wilsonは『Friends(1968年)』から『Sunflower(1970年)』などにかけてのBeach Boys不朽のマスターピースにもナイスなナンバーを提供していたくらいで、そのソロ作でもその隠れた? 名ソングライターぶりを発揮している。時折Wilsonファミリーの濃い血統をも感じさせつつ、慎ましくもテンダーでナチュラルな佳曲揃いである。
 この浸透率の高い大らかで心地よいウエストコースト・サウンドと、何より無骨でザラッとしたD. Wilson自身のボーカルが素敵じゃないか。時に過剰と感じるようなオーケストラ・アレンジのにぎやかしすらも、今となっては夢の跡というか…さびれてしまった遊園地みたいな一抹の哀愁を感じてしまう。
 
・Dennis Wilson - You and I

 
I'll never make the headlines or the evening news
There won't be rags to riches story for me
Oh, but the songs that I sing won't be blue
Ooh yeah, honey you and I, oh you and I
No more lonely nights
 
 久しぶりにD. Wilsonのレコードを取り出してきたのは他でもない、今週20日モンテ・ヘルマン監督が亡くなったとの訃報を聞きつけてのことである。91歳の大往生とのことであるが、ひと言お悔やみを申し上げたい。
 90年代以降は寡作な監督であったが、個人的には特に『断絶(Two-Lane Blacktop)』(1971年)が大好きな作品であり、10年ほど前に見た初めて劇場で鑑賞した際に、今まで味わったことのない衝撃と余韻に襲われた作品でもある。賞金稼ぎである2人のドライバーとメカニックが車に乗り込み、変わり映えのしないアメリカの広大な街や原野を駆け抜けるだけのロードムービーといえばそうなのだが、終始何とも言葉にし難い、他の映画には決してないような唯一無二の魅力を持つ作品である。
 

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 名もなき無口なドライバーとメカニックをそれぞれJames TaylorとD. Wilsonが演じており、その時点すでにアメロックファン垂涎なのであるが、これがまた実にイイ温度感なのである。そもそも男前2名であるので、何でもないデニムスタイルに無地のTシャツとタンガリーシャツなどをサラッと着ているだけでも画になってしまう。しかしそこで露骨に彼らの演奏シーンが差し込まれたり、楽曲が流されたりなどという無粋な演出など一切ない。
 初めて鑑賞した際に爆音上映で鑑賞したこともあり、その切り裂くようなモーター音の爆音ぶりと無口な2人のコントラストもひとしおであった。70年代アメリカの活気ある匂いで充満したロケーションの中にあって、気持ち悪いくらい乾いていて静的な映画でもある。
 このGWにでも久しぶりに手元のDVDをゆっくり見返してみようかしら。
 
・Two-Lane Blacktop (1971) - Trailer

 
 よりによって誕生日に死者の話ばかりであるが…どちら様も毎日死に向かって生きているわけで。挨拶などで「どうかご自愛を」などと声をかけ合うが、年々「自愛」の大事さをひしひしと感じるわけであります。自分にも優しくできない人間が他人に優しくできますか? と。
 ところで私もこう見えて顔ジャケに対して憧れがなくはない。へぇ〜アノしまりのない丸顔がねぇ…とお思いでしょうけども。