Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

汽車

 彼ってば「何食べたい?」なんて聞くものだから、昨日はお誕生日だったので、わがまま言って根菜類の煮物、野菜とキクラゲの巾着、卵豆腐に海老めかぶ和え 、ブロッコリともやしのナムルなどを作ってもらった。

 

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「おやおや…紅白をあしらってレンコンさんやエビちゃんで長寿祈願とは、お正月か何かかい?」
「誕生日ディナーがこのチョイスとはなかなかお渋いねベイビー」
だなんて言われたりして。
「今日も美味しいよ、いつもありがとう」
「ケーキなんか必要ないよ、デザートは君さマイスイートハート」
なんて照れながらも感謝をちゃんと言葉にしてみたりして。
 
 …ええ、とんだソロによる自作自演ショウですけど何か? 
 自分で自分をお祝いするのってば最高である。一度やってみ?
 
 引き続きましてはお待ちかねの誕生日プレゼント開封の時間である。
 これは…久保田麻琴『まちぼうけ』(1973年)のリイシューLPではないですか。
 この作品は個人的にかねてより愛聴してきた1枚であり、かねてよりレコードで聴きたい、と密かに熱い視線を注いでいただけにとても嬉しい(さすが彼ってば私の趣味をわかってる)。
 

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 あくまで久保田麻琴氏の朴訥としたギターと歌を基調にしたシンプルでナチュラルなプロダクションがとても好みである。

 当時サンフランシスコ洋行帰りに録音された作品ということも影響しか、いわゆるな当時マイナー調が主流の国産フォークに比べると、圧倒的にサラッとしていてベタつかない、風通しの良い点が個人的にとてもしっくりくる。ギタースタイルや音選びも正にアメリカンルーツに端を発するそれである。かと思えば氏のホームである京都は丸山神社にまつわるカワいらしいナンバーもあったり。その後氏が夕焼けバンド(楽団)やサンセット・ギャングなどでニューオリンズやハワイアン、沖縄など…ひとところにとどまらない八面六臂なチャンプルー・サウンドに移行していったキャリア(こちらも最高だが)も考えるに、今となっては改めて貴重な初期録音だと思う。

 個人的にはこの作品を「アシッドフォーク」と思って聴いたことはあまりないし、単純にこの捨て曲のない、至極真っ当な私的フォーキー作品のレコード復刻を素直に喜びたい。
 
久保田麻琴 - 汽車(5:35​~)

 
ひとりぼっちの 寂しい僕には
君がくれた抱擁は あまりにも熱すぎた
だから僕はひとりで 夜明けとともに汽車に乗る
 
 …それにしても最近リリースされるレコードは高価すぎやんね、小ロット生産の中での採算など考えるにやむにやまれぬ事情等が多分にあるのだろうが、輸入盤のみならず国内盤も今やすっかり高級嗜好品となり果てており弱ってしまう。自分を含めた日本人ワーカーの収入は全く上がらなくなって久しいのにも関わらず、である。下世話な話であるが『まちぼうけ』も自分にとっては決してお安くはなかった…けどお誕生日だし彼ピが買ってくれたので良しとしよう。
 
 先述の『Now』のリイシューや『Lost Futures』の新作なども軒並み新品LPで6,000円超でバカバカしい限りである。だったらもっと他にも安く入手して聴くべき埋もれた傑作はいくらでもあるやろ? などとつい思ってしまう。かつてJoe StrummerやIan Mackayeのような良心的パンクスがレコードやギグのチケット料金をぐっと下げて市井のキッズのために門戸を開放したのは一体何だったのか? 時代が違うと言えばそれまでであるが。…とどのつまりレコードをもう少し安くして下さい(嘆願)。
 
  久保田麻琴氏のインタビューを自分はこれまであまり読む機会が少なかったが、今回の再発に伴う最近のインタビューを目にした↓。日本語で歌うことや日本人としてのアイデンティティはっぴいえんど裸のラリーズ水谷氏との交流なども興味深い。現在でも肩肘張らないフラットな視点に好感を持った次第である。
 

 

 「だから、あまり他の人から影響を受けすぎず、自分たちを大事にしていく。そのことだけをちゃんとやりたいんです。「それぞれ個々の人生を大事にしてくださいね」ということ。自分が音楽つくったり、音楽を人に伝えたりするというのは、そういうことなんだと思う」(久保田麻琴
 


 ちなみに久保田麻琴氏は、先述のSublime Frequenciesなんかと時同じくして、自国の阿波踊りだとか郡上盆踊り、宮古島の古謡なんかの伝統音楽のフィールド録音のリリースなんかにも積極的に取り組んでた方でもある。