Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

Coming Up

 GWの晴れ間にMississippi氏の展示「NIGHT ON EARTH」へ出かけた。
 氏のここ数年の暗闇や灰色を地色にした作品が好きである。ダークなフィルターに覆われた向こう側の世界を否応なく想起させるけど、持ち前のコミカルなポップさとのコントラストで独特の緊張感と安心感が同居していると感じる。地元ローカルな生活空間を舞台として切り取る視点もまた良い。
 
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 出来上がったばかりの作品集は自主出版で発刊したそうで興味津々…オール4色刷+青焼きで構成された重厚感ある力作に仕上がっていた。マット系の用紙やPP加工なんかも作品に合っていて功を奏していると感じた。印刷製本も含めて丁寧な仕上がりからこだわりが伝わって来る。聞けばデザイナーやカメラマンも立てて臨んだという意欲作だそうだ。
 しばし氏の案内を聞きながら大きなキャンパスに描かれた画をゆっくり眺めたり、それらの画を前に久しぶりに歓談したり。ここ最近の音楽の現場でもそうなのだが、こうした当たり前に感じていた現場もいちいち新鮮なものに思えて、五感から入ってくる情報もより鮮明に感じられる昨今であった。〜5/12 までの開催だそうである。
 

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 その後まっつん氏と連れ立って、久しぶりに入店する焼肉屋さんでサガリを焼くなどした。街なかにはそもそも休業中の店も少なくなく、ようやく入店したこちらでも勿論アルコールの提供はなかった。たまらずフレスコで缶ビールを1本ずつ入手して晴天の鴨川べりでささやかに乾杯する畜生な我々なのだった。そもそも飲食店内での酒類提供規制がお店の売り上げリスクに対して、実際にどれだけの感染拡大予防につながるのか…とか思っているのだが、せっかく皆して耐え忍んでいるわけなので、是非その効果のほどを期待したい。
 密を避けてはより北側エリアへと落ち着いたが、川べりは全体に思ったほどの人出ではないようだが、この連休の貴重な晴れ間に乗じて、同朋が入れ替わり立ち替わりで日向ぼっこに興じている、という風情であった。
 ついでに鴨川からほど近い三浦カヨ氏の新しい職場にも顔を出してみる。中近東、インド、東欧を中心とした手工芸品を扱う雑貨店にお勤めで、男性でも思わず手に取ってしまう興味深い品々であふれているお店なのだった。今後はプレゼント進呈用などにも何かと重宝しそうである。久しぶりに友人たちにも会えて話もできたし、おかげさまで束の間のGW気分を味わうことができた。
 
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 ワカメ、きくらげと根菜のスープは顆粒昆布ダシと白だしのみであっさり、〆サバはますます仕上がりの安定感が増しつつある。残り物のおからパウダーによるポテサラ、コンソメとめんつゆ少々でチンした新玉ねぎと頂いた。
 

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 Paul McCartney『McCartney II』(1980年)を聴くのだ。先述のMississippi氏が展示の際にたまたまポールのTシャツを着ていたこともあって。
 プライベートで肩の力の抜けた宅録感が何とも愛着ある1枚である。妻リンダのコーラス参加以外は全てポール本人の演奏である本作は、元々はリリース用の録音ではなかったとも聞く。 その音楽もさることながらアートワークのテンションからして謎めいている。
 

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 前作『McCartney』(1970年)リリース時は、折しもちょうどBeatles解散直後であり、1980年発表の今作は皮肉にもWings活動休止直後のタイミングであった。成田空港で大麻取締法違反で逮捕→日本ツアー中止という受難の年にリリースされた同作は、全編何とも言えないあっけらかんとした虚無感があって個人的には味わい深い。
 音楽的には当時のディスコ・ファンクからの影響なども濃厚に思えるものの、圧倒的に音圧がなくチープとすら言えるこの作品は、どちらかと言うとインドアな趣きである。そのよそ行きではない着古したパジャマみたいな肩肘張らなさが個人的にはかえって魅力的だと思っている。
 かういう自分は昨年の今頃はあまり色々な音楽を自発的に聴く気になれない時期で、そんな時は一日中Beatlesゆかりのナンバーだけがかかっているネットラジオを何となく着けぱなしにしていた。その折に改めてBeatlesってば4人の個性のケミストリーが織りなす計り知れない「寛容さ」があるバンドだな、などと漠然と感じたものだが…中でもポールの書くナンバーは人懐っこさや遊び心が感じられてまた好きなのである。
 
Paul McCartney - Coming Up

 
 ちなみに次作『Tug of War』(1982年)はぐっと洗練されており、この作品の後に聴くと逆に戸惑ってしまいかねない。が良い作品だと思うし、アルバムラストを飾るStevie Wonderとのデュエット曲「Ebony and Ivory」は個人的に特にフェイバリット・ナンバーである。
 

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Paul McCartney - Ebony and Ivory

 
Ebony and ivory
Live together in perfect harmony
Side by side on my piano keyboard
Oh lord, why don’t we?
 

 昨2020年に突如リリースされた『McCartney III』を実は未聴なのであるが…そんな怠惰な私をポール作品はきっと気長に待ってくれるはず。そしてしかるべきタイミングで聴きたいと思っている。

 

Paul McCartney - McCartney III (Official Album Trailer # 2)