Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

Alameda

 半額になっていたアジでお造り、野菜の具だくさん味噌汁、切り干し大根とツナのサラダ、新玉ねぎとキャベツの温野菜にレンコンのアチャールを添えて。春先のキャベツと玉ねぎの甘みに包まれるとたまらなく至福である。久しぶりに週末に集中して遊びに興じたためか疲労感を感じており、野菜をたくさん摂取したい気分だったので満足であった。
 

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 SNS上にて京都在住の某シンガーの方のあまりに早すぎる訃報が流れてきた。脳出血で倒れられて、そのまま息を引き取られたそうである。個人的には彼女のライブや作品を聴いたことはなく、直接お話しした機会も一度きりなのだが、周囲の方々の動揺や喪失感、故人の人徳などに触れるにつけてズシンと響くものがあった。
 てっきりその貫禄から年上の方かと思っていたら同級生だったこともこの度初めて知った。同じお酒好きということもあり勝手ながらあまり他人事にも感じられない。老舗ライブスペースの店員さんをされており、ライブイベントの際には満場のお客さんを相手に見事なフロアさばきぶりだったお姿などをも印象的である。かげながらご冥福をお祈りします。
 
 「This Is Us シーズン4」後半の流れもありElliott Smithの『Either/Or』(1997年)でも久しぶりに聴こうかい。リリース以来もはや長らくの愛聴盤となってしまったが、改めて何れ劣らぬ名曲ぞろいの作品である。
 当時はちょうどインターネット整備前夜という感じで、まだまだ雑誌なんかも読みながら音楽情報なんかも並行して仕入れていた記憶がある、ただしCMJのチャートとかインディバンドやレーベルに関する小さい記事とか。がしかし何より大きな決め手になったのはレコード屋さんでの実際の試聴だったわけで、このアルバムも試聴機で出会った1枚だった。
 「1997年」という年は、自分が多感かつヒマな時期だったことも影響しているが、自分史的に外せないマスターピースばかりが毎月のようにリリースされていた奇跡の豊作イヤーでもあった。
 

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※写真は数年前にLPで買い直したもの。当時はCDを買って聴いていた
 
 『Either/Or』を聴いていると、そんな当時の自分の青臭いナイーブさなどがフィードバックしてきてはムズムズと気恥ずかしくなるが…E. Smithの音楽自体は今聴いても、叙情に流されないクールな視点や、シニカルなユーモアが感じられて改めて好きだ。
 根深いドラッグやアルコールへの依存なども含めて彼の生きづらさみたいなものがそのまま音楽になっているというか。彼の作る曲のコード感にふと混ざり込むマイナーやビターさも独特であると思うし、(全パート自分の手による)純度の高い空気感を閉じ込めたザラッとした手触りの録音も少なくとも当時の自分にとっては理想的だった。
 同作に対する思い入れのあまり、その後(地元ポートランドの良心とも言うべき)Kill Rock Starsのリリースを経てメジャーのDreamWorksからリリースされた『XO』、『Figure 8』辺りの作品は、リリース当初は一聴オーバープロデュースにも感じられてしまい、「遂にE. Smithもセルアウトしてしまった」とばかりにしばらく聴かず嫌いを起こしていたものだ。…がしかしその後CDを買い直して ちゃんと冷静に聴き返したところ、いずれも素晴らしい作品で申し訳ない気持ちになった。
 当時十代後半の私も丸顔のくせしていっぱしにトガっていたというわけだが、とにかく他にも聴くべきものは古今東西多すぎたし、自分もまた狭量だったとも言える。ここ最近だと遅かれ早かれ出会うべきタイミングは訪れるはず、などとつい悠長に構えがちであるが、例えばE. Smithは2003年に34歳の若さで急逝しており、もはや彼の新作やライブを聴くことは叶わないのだ。すれ違いの切なさもまた人生の常であるが、しかるべきタイミングを逃してはならないよね、などと改めてひとりごちるのだった。
 
Elliott Smith - Alameda

 
Nobody broke your heart
You broke your own because you can't finish what you start
Nobody broke your heart
If you're alone, it must be you that wants to be apart

 このほど初めて知ったのだが、タイトル 『Either/Or』 とはE. Smithが大学時代に哲学を専攻していたこともあり、「実存主義」でおなじみキルケゴールの『あれか、これか(Enten - Eller)』から引用したものだそうである。大変興味深いのは山々だが、あいにくキルケゴール著作は未読につきボロが出そうな言及は避けたい。今度がんばって読んでみようね(←理解できんのかよ)。