早くも陽は短くなり太陽光もますます弱々しくなって、夏の終わりが近づいていることをひしひしと感じる日々である。
鶏モモ肉と玉ねぎをクミンベースのスパイスミックスに一昼夜漬け込んだものをフライパンでしっかり目に焼いたの、アスパラとマッシュルーム、玉ねぎなどをトマト缶や鶏がらスープなどと加熱して冷やしたの、冷奴キムチのせ、キュウリの塩もみ、ベトナム風シーズニングの残りでナスをチンして冷蔵庫で冷やしたの、など。
やっぱり生き物って、目の前を動き続けている対象に、ついつい目がいっ てしまう本能的な習性があるようだ。
The Mighty Upsetter(Lee Perry)『Kung Fu Meets The Dragon』(1975年)。この1995年Justice Leagueからの再発盤はオリジナルDip盤より2曲多く収録されている。
『Kung Fu Meets The Dragon』は、当時上映された「燃えよドラゴン」(1973年)に強い感銘を受けて制作された一作とのことで、全体にカンフーやドラゴンのそれを思わせる雄叫びやサウンド・プロダクションが凝らされており、どこを切っても泣ける珠玉の1枚だ。
このインチキくさいアートワークにしてこの中身もバッチリ間違いなしなのである。The Upsettersのアンサンブルもクールで、Augustus Pabloのメロディカの風通し良いリードプレイも至高である。
・Lee Perry - Iron Fist
夏の終わりにCharlie Wattsに続く形で、今度はLee 'Scratch' Perryの訃報が入った。
亡くなったとは聞いても、ガラクタのスペースシップにでも乗って宇宙へと帰って行ったかのような印象が強くて、この地球上から肉体が失くなってしまったものの、そのソウルは今もどこかでハッピーに踊り続けているような気がしてならない。なので個人的にはあまり哀悼という感じにはなれないのだが。
バナー広告やSNSなんかの呪縛からは遠く離れて自由に生きたい、などと嘯いてみたところで実際にそれは難しい現実社会である。ところがそんな中でも…85歳でその天寿を全うするまでその本能赴くままに、思う存分「音」と自由に戯れ倒した人がL. Perryという人だったのではなかろうか?
金銭トラブルのエピソードも聞いたことがあるし、プライベートの顔なども知る由もないのだが、事実これまで彼の作品を聴く度に幾度となくニンマリ笑顔にさせられてきた。それは自分にとっては理屈などではなく、何かを食べて「美味しい」と感じるような本能に訴えかける動物的な作用であるように思う。
自宅裏庭に建てられたBlack Arcスタジオでの作業映像など垣間見るに、何と言っても純粋に楽しそうにダンスするL. Perry御大あっての、このスタジオに漲るハッピーなサウンドとエネルギーだろう(もちろんウィードによるブーストもたっぷり利いているのだろうが…)。実験と言えばそれもそうだけど、どちらかといえば「遊び」のようで思わず多幸感を感じてしまう所以か。
・Lee Scratch Perry - Studio Black Ark
Black Arc内でセッションされた数々の作品中には現に御大の呟きや咆哮時々ゲップ…その他の身近な生活ノイズの断片などがドキュメント的に切り貼りされていて、Dubと言えばそうだけど、コラージュアート作品のようでもある。他人にとっては取るに足らないけど、御大にとってはなくてはならないピースで埋められた無二の一枚画さながらだ。そのほころびや欠け、ズレの角度ですら大いなる愛着を感じずにはおれない。
R.I.P. Lee 'Scratch' Perry(1936-2021)