Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

トーチ

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 平日夜更けの夢の中--地中深くに生き埋めにされる夢を見てひとしきりウンウンうなされた(多分)。
 
 「Kill Bill」のユマ・サーマンじゃあるまいし、むしろ運動神経の劣るこのような平々凡人ごときが脱出できる訳もなく……ひたすら暗くて狭いスペースで虚しくもがきながら、薄くなる酸素を吸い込みながら冷や汗ばかりかいている。ユマ・サーマンの場合は棺桶に入れてもらってたけど、情け容赦ない生土である、自分の場合。
 殊に閉所恐怖症の気がある私には生きた心地のしない苦悶の時間であった。夢の中でも終始息苦しくて、いっそこの場で舌を噛み千切って死ぬのとどっちが苦しいか? などと天秤にかけた記憶がおぼろげに残っている。
 就寝間際に戦地のニュース等をチェックしていたせいか、はたまた繁忙期の仕事や日常のストレスだろうか?
 何らかに抑圧されていることは間違いない。
 
 先週3月5日は、自宅で十三月主催の「No War 0305 Presented by 全感覚祭」の配信動画をリアルタイムで見ていた。
 土曜日の昼下がりの新宿駅前にわずか5日でこのようなステージを用意してしまうGezan(十三月)の駆動力にまず圧倒された。
 突貫ならではの、出演者それぞれの剥き出しとも言える周到に準備されたのでない声明=音楽が十人十色であり。されど「No War」というひとつの同じ願いの元に集っただろう温度感がじわじわ伝わってきた。
 
 さや氏の「何を言おうかな? 何が言いたいかな?…」「今日も形にできなかったな」という戸惑いのようなフェード・インで始まるテニスコーツの丸腰でラップしていくことで作られていく無骨なステージには、画面越しにも思わずグッときてしまった。
 ラストのTears For Fears 「Everybody Wants To Rule The World」カラオケカバーのヒドい脱臼具合(褒め言葉です)にも彼らの美しさが伝わり思わず目頭が熱くなり。
 
テニスコーツ - LIVE(No War 0305 Presented by 全感覚祭)

 
 とはいえフェス特有のハレのお祭り的な高揚感や連帯感みたいなものはなくて、まして出演者諸氏の自己耽溺的なヒロイズムや扇情といったテンションも感じられない。
 単純に誰しも結論の出ないまま、やり場のない思いを胸にただただ一個人が集ったという所感のドキュメンタリーを目の当たりにしては、ふと我が身の置きどころを探したりするのだった。
 そういう意味ではちゃんと「モヤっと」させてくれた稀有な集会というか。
 

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 コロナ禍中での開催ということもあり、現場スタッフの方々も感染予防対策等にも色々腐心されたことだろう。そもそもから音楽にも絡めたこういった集会からして冷笑されたり、歓迎されない向きも少なからずあろう、とも思う。
 だけどだからこそ、終盤の3者トークの場面での折坂悠太氏の「バラバラならバラバラなほど、一辺倒の暴力=戦争に対抗する唯一の手段なのじゃないか」という発言が個人的には響いたし腑にも落ちた。
 大きな派閥に属するのでない一個人が、もっとより各々の立場から考えてみたり発言したりする必要があるのではないか。意味とか意義は決して他人から与えてもらうものではなくて、それぞれが自分で探すべきなのではないか? そんなことを突きつけられた。
 
 今や反戦デモなんて古いという感覚の方がよっぽど古いのかもしれない、若者はかくもしなやかで聡明であってこんな状況下にあって少なからず頼もしく感じた。
 おかげ様で京都の自宅にいながらにして貴重な現場を垣間見ることができた。
 
・折坂悠太 - トーチ

 
街はもう変わり果てて
光も暮らしもない夜に
お前だけだ その夜に
あんなに笑っていた奴は
私だけだ この街で
こんな思いをしてる奴は
 
 ちょうど土曜朝にラジオからも折坂氏のこのナンバーが流れていて、この終末的な孤独感の淡々とした描写たるやとてもイイ歌詞だな、と思ったところだった。言葉選びが真摯なシンガーなのだな、と改めて感じた次第である。
 
 ロシアとウクライナの歴史について付け焼き刃的に調べたりするなど。
 これまでの自分の不勉強が今さら恥ずかしくもなるけど、知れば知るほどに根が深い。特に隣接する他国という存在がない島国育ちの単一的な日本人である自分のような者にはなかなか実感の湧かないことも多い。…がしかし今や全くもって他人事ではない。
 隣接する東西の国家同士の威嚇と牽制の泥試合、支配と独立の歴史…大国ロシアはこのまま強行的にウクライナに対して今後も一方的に要求を聞かせるだろう。
 そもそも国防を磐石にするために起こす侵略戦争なんて全く本末転倒であるし、結局はまたしても一部大資本家の利益確保のガイドラインに沿った政治決定に一般市民が巻き込まれた不幸でしかないのか?
 自分ごときには安易な解決策など到底見出せないけど、結局はまたしても核の存在がお互いを脅かしており、武力行使によって直接的に血を流すのは末端の一般市民である、という事実に対しては簡潔に強く「NO」を唱えたい所存である、引き続き。
 小児病院や原発を爆撃するようなロシアの鬼畜極まりないやり口には閉口するし、より被害が拡大する前にどうか世界平和のために即刻退場願いたい……かといってウクライナにも肩入れする立場でもない(ウクライナ支援は必要であろう)。
 
 ロシアはどうか大国の余裕でも見せて、(ウクライナには)NATOに加盟させてくれたらよろしいやないですか? なんて思わず素人考えをしてしまうけど。
 とにかくこのような有事につけて自分の無知さ無力さ加減が嫌にもなるけど、一方ではやはり一個人が必要以上の頭脳やまして権力など持つべきではないとも改めて考えるところである。
 
 折しも今日は3月11日の金曜日であった。
 どうか恒久の平和を願いつつ黙祷したい。
 

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