Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

Blood Is Thicker Than Water

 

 昨晩久しぶりに人前でバンドのライブをする夢を見た。場所は神戸、ステージは何故か真っ昼間のデパートのイベントスペースの余興みたいな一幕であった。ところが事前にレパートリーを1曲も用意しておらず、当然バンド(4人編成だった)で一切打ち合わせもない。

 会場には子連れの親子なんかも多くて、いわゆる張りつめた感じの即興(インプロ)演奏みたいな方向性も場違いであり(そもそも出来もしないではないか)、本番を目前にただただ戸惑うばかり、という夢を見た。
 その後自問自答しながらも、とにかくもう出演時間でもあるし、まずは単純なリズム合奏から入って後は行ってらっしゃい、でともかく演奏を楽しもう、と腹を括ったところで目が覚めた。…一体何これ?
 
 先週土日は新曲作りに精を出していたこともあり、ここ最近はあまり映画などをゆっくり見る時間を取れていない。
 デンマークの「特捜部Q 檻の中の女」(2013年)を鑑賞した。「特捜部Q」シリーズは、個人的にはAmazon Primeで偶然「特捜部Q キジ殺し」(2014年)、「特捜部Q カルテ番号64」(2018年)に遭遇して以来衝撃を受けてきた。
 

 
 「〜檻の中の女」は時系列としてはシリーズ1作目に当たり、相棒アサドとの出会いや「特捜部Q」の発足黎明期を描いた作品である。いわゆる刑事ミステリーものではあるのだが、開始早々主人公たちがいきなり犯人に襲われて瀕死の重傷を負うシーンから始まる。そもそも主人公の刑事カール(ニコライ・リー・コス)がまたクールを軽く通り越して、もはや無愛想で実に感じが悪いキャラクターである。そして1作目はタイトルからも察せられる通り監禁もので、見る前から気が重くなるのだけど。見始めると毎度すっかり引き込まれている自分がいるから全く不思議だ。
 それにしてもスウェーデンの「ミレニアム」シリーズなんかにも代表されるように、北欧ミステリーって何でことごとく暗いのか、暗すぎるのか? 本当に何度も息苦しくなってその度に気が滅入るんだけど何故かやめられない中毒性がある(…などと思っていたら偶然にも「〜檻の中の女」は「ミレニアム ドラゴンタトゥーの女」の制作スタッフによる作品だった)。
 
 折しもちょうど、シリーズ最新作「特捜部Q 知りすぎたマルコ」が、どうやら今年初頭に日本でも上映されていたという事実を先ほど知ったのだが、寡聞にして全く知らなかった。何の告知も噂も全く見聞きしなかったな。
 
 残っていた牛肉を野菜に塩コショウして強めに炒め合わせて、そこにターメリック、パプリカ、ガラムマサラカレーパウダーを振って適当に香り付けした。ちぎった生のシャキッとレタスと合うこと。
 

 
 かつて自分の幼少時に、母の作る弁当がいわゆる「茶色い」彩りのお弁当であり、子ども心に華やぎやポップさに欠けるな、と思っていたものだが…こうして見ると実に血は争えないものである。
 
 William DeVaughn『Be Thankful For What You Got』(1974年)をね。
 何年前かに再発された際に購入した盤を引っ張り出しては最近また聴き返している。フィラデルフィアは名門シグマサウンドにてMFSBメンバーが当時無名のシンガーのバック演及びプロデュースを務めており。W. DeVaughnはMFSBに見出されるまでは、公務員をしながら歌手活動をしていたのだそうで、この作品以降はたったもう1タイトルしかアルバムをリリースしていないようだ。
 

 
 タイトル曲の「Be Thankful For What You Got」は最大のヒットナンバーとなったようだが、自分の世代などは、その後数多の後進ミュージシャン…例えばMassive Attack(1991年)やYo La Tengo(1998年)などにもカバーされたものから先に聴いたのだった。
 …がしかしこの1st作はこのワンヒットワンダー作に頼らない、全編息を呑む素晴らしい内容である。ともすればこの「エモくない」歌唱が、その後ソウルシンガーとしては大成しなかった所以なのかもしれないけど、自分などにはちょうど良い、というか絶妙な塩梅である。
 プロフェッショナルな技量で音を外さないだとか、感情的に歌い上げればグッとくるかというと、自分の場合は全然そうではないようで。むしろこの陽だまりでも感じさせてくれるような温かみある、ジェントル&テンダーな歌い口がしっくりくるのだった。
 
・William DeVaughn - Blood Is Thicker Than Water

 
Blood may be thicker than water
But not when you're caught in love's flood
Blood may be thicker than water
But nothing's thicker than love
Nothing's thicker than love
 
 スイートナンバーがまた秀逸だけど、本日はこちらの(あたかも「Be Thankful〜」の前奏のような)歯切れ良いナンバーが気分である。
 
 2nd作『Figures Can't Calculate The Love I Have For You』(1980年)は未聴なのだが、「Be Thankful〜」の新バージョンも収録されている辺り、若干弱腰に感じてしまうのは自分だけだろうか?
 
 さて金曜日なんだそうで。
 “Be Thankful For What You Got”の精神にて、自分もまた他人を羨むのではなく、自分の今手にしているものにこそ、改めてささやかな感謝の意を表したいと思う。
 どちら様も良き週末を。