Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

Venus(de Milo)

 
 自宅では家事をしながらラジオをよくリスンしている。
 先週末の「ウィークエンドサンシャイン」の「Terry Hall(Specials)追悼特集」、「山下達郎のサンデーソングブック」の「極私的 高橋幸宏 追悼」はどちらも大変楽しめる内容で、自分が今まで知らなかった故人の側面が聴けて新たな発見が多い放送であった(そもそもこれまでさほど聴く機会がなかったこともあり)。
 何より各DJ諸氏による思い入れを大いに感じるガイドも理想的で、時代ごとの音楽の変遷がとても興味深かった。改めて人に歴史あり、である。
 それぞれリアタイでなくても「radiko」や「らじるらじる」を利用して繰り返し聞くことができるのもありがたい昨今である。
 
 ひとたびミュージシャンが亡くなるや、各メディアやSNSでも追悼等があふれ出す。もちろんその内容は(自分も含めて)海千山千であるが、それがたとえ中には形式的なものであったり、自分語りなものであっても…個人的には死者を送り出す際の「ご挨拶」みたいなもので、故人やその生前の音楽を思い出すこと自体はごく自然な儀礼なんじゃないか、とも思える。
 「死」そのものが誰にも等しく必ず起こりうる、いわば「自然現象」に近いものである以上、できるだけ冷静に受け入れたいものだと常々頭では考えているけど、あいにくなかなかその境地には到底達しえない。
 とは言え面識すらないミュージシャンの死に対していちいち感傷的になったりはしないけど、故人もまたミュージシャンである前に誰かにとっての家族や友人でもあり。いち聴き手の立場としてはウロウロと故人の足跡を辿ることくらいしか出来ないのだが、これから先もこんなことの連続なのだろう。
 
 人に歴史あり…ということで言えば、もはやベテランの域、EBTGの変遷もまた興味深い。何と24年ぶりの新作リリースがアナウンスされ、それに伴ってMVが公開されたのだけど、こちらがまた大変クールだなや。…ちょっと狙いすぎなのかもだけど。
 アジアンやブラック混合のコンテンポラリーダンサーたちを配して長回しのワンカットカメラ編集なしで臨んだ意欲作で、Tracey Thorn + Ben Watt の2023年現在地における視点に唸らされた。と同時に強くブレないものも伝わってきて頼もしい限りだ。
 
Everything But The Girl - Nothing Left To Lose

 

 今冬シーズンは、特に白味噌×酒粕の消費量がぐっと増えている。ゲストに生姜なぞも召喚すれば立ちどころに冷え切った体が温まるので大変重宝している。ここ最近はオリーブオイルを垂らしてみたり。さらにホットになれるし具材の味も引き立つし、でこちらもなかなかの名バイプレイヤーぶりである。
 

 

 Television『Last Live In Portland Oregon 1978』(1993年)を。
 「Recorded on July 3, 1978 at The Earth Tavern in Portland, Oregon.」とのクレジットあり、2nd作『Adventure』リリース年のライブ録音と思われるが、早くも「ラストライブ」と銘打たれておりバンドの短命ぶりを伺わせて切ない。
 

 
 私の場合、かつてTelevisionの音楽に最初に惚れたきっかけはと言うと、彼らのこのライブ盤であった。
 『Last Live In Portland Oregon 1978』(1993年)はいわゆるブートCDであるが、個人的には同78年のNYでのライブを収めた『The Blow Up』(1982年)よりも先に耳にしたこともあるせいか、特にその演奏内容にはより思い入れがある。あまり大きな声では言えないけど。
 『Marquee Moon』だけでなく『Adventure』からのライブ演も多く収録されているし、何と言ってもここに収録されている「Little Johnny Jewel」のキレキレの格好良さたるや… 当時シビれ上がったものである。
 
・Television - Foxhole 

 
・Television - Little Johnny Jewel 

 
 スタジオ録音作品では伝わりにくい(と当初は感じていた)、バンドのライブでの熱量やウネりといったものの魅力に開眼して以来、一気にスタジオ作にも傾倒したのだった、自分の場合。…実は久しぶりに聴き直すにちょっと暑苦しくも感じるけど。
 
 この度久しぶりに『Marquee Moon』のLPとCDを手に開いてみたところ、2013年に観に行ったTelevision来阪公演の半券をトレーに挟んだものが出てきた。つい数年前のことに思えるけど、早10年が軽く経過しており思わず唖然としてしまった。
 

 
 当時来日メンバーは、オリジナルメンバーに加えて、Richrd Lloydに替わってJimmy Ripなるギタリストが参加していた。
 Tom Verlaine持ち前の端正で艶やかなギター&ボーカルは、エイジングされていぶし銀の渋みを感じさせつつ、Billy Ficca(Dr.)とFred Smith(Ba.)の、歯切れ良くバウンドする独特のビートを生で聴けて感激であった。改めて『Marquee Moon』を聴いていても、このズンドコしたドラムとベースによるガレージ感が、Televisionというバンドを実にパンク・バンドたらしめているように感じる(この辺りはもしかしたら前任者Richard Hellの名残もあるのかもしれない)。
 R. LloydとT. Verlaineのツインギターの妙こそライブで聴けなかったけど、J. Ripもブルース・フィーリングを感じさせるナイスなギタリストであり、十分バンドに貢献していたように思う。
 
 それにしても『Marquee Moon』(1977年)は改めて不思議な魅力のある作品である。一聴平面的なのに艶やかにして弾力性のある有機的な置物みたいで…全てのバランスは整然と行き届いているように感じられる。およそデビュー作らしからぬ、その落ち着きというか抑制ぶりすらも神秘的に感じられて奥行きの豊かさは今もって底知れない。ちなみに一方次作『Adventure』は妙な軽みと明るさを湛えており、こちらもお気に入り作である。
 
・Television - Venus(de Milo

 
It was a tight toy night, streets so bright
The room was so thin between my bones and skin
There stood another person who was a little surprised
To be face to face with a world so alive
 
 『Marquee Moon』屈指の名曲群の中にあって、個人的に一番好きな曲は今ならこれかしら? あるべき位置にあるべきピースが過不足なく収まっているように感じられて、完璧とすら思えてくる稀有なナンバーである。
 
 遂にTom Verlaineまで逝ってしまわれた。享年73歳とのことだった。
 Thurston MooreKevin Shields、J. Mascis…思えば自分世代のギターヒーロー達はこぞってフェンダー社のジャズマスターを弾いていた(かく言う自分も弾いていた時期あり)。おそらくは若き日の彼らに影響を与えたマスターこそは、T. Verlaineその人に他なるまい。
 偉大なる魂のご冥福をお祈り申し上げます。
 

R.I.P. Tom Verlaine
 
 はたと気が付けば2月に入って今週も金曜日である。今週も1週間お疲れ様でした。
 明日は久しぶりのライブである。もはや他人との距離感もすっかり分からなくなって久しいし、何かとざわつきがちなご時世だけど、せっかく頂いた機会なので、なるべく落ち着きを持って取り組みたいものである。