Venus(de Milo)
自宅では家事をしながらラジオをよくリスンしている。
何より各DJ諸氏による思い入れを大いに感じるガイドも理想的で、時代ごとの音楽の変遷がとても興味深かった。改めて人に歴史あり、である。
それぞれリアタイでなくても「radiko」や「らじるらじる」を利用して繰り返し聞くことができるのもありがたい昨今である。
ひとたびミュージシャンが亡くなるや、 各メディアやSNSでも追悼等があふれ出す。 もちろんその内容は(自分も含めて)海千山千であるが、それがたとえ中には形式的なものであったり、 自分語りなものであっても…個人的には死者を送り出す際の「ご挨拶」みたいなもので、故人やその生前の音楽を思い出すこと自体はごく自然な儀礼なんじゃない か、とも思える。
「死」 そのものが誰にも等しく必ず起こりうる、いわば「自然現象」に近いものである以上、できるだけ冷静に受け入れたいものだと常々頭では考えているけど、 あいにくなかなかその境地には到底達しえない。
とは言え面識すらないミュージシャンの死に対していちいち感傷的になったりはしないけど、故人もまたミュージシャンである前に誰かにとっての家族や友人でもあり。いち聴き手の立場としてはウロウロと故人の足跡を辿ることくらいしか出来ないのだが、これから先もこんなことの連続なのだろう。
人に歴史あり…ということで言えば、もはやベテランの域、 EBTGの変遷もまた興味深い。 何と24年ぶりの新作リリースがアナウンスされ、 それに伴ってMVが公開されたのだけど、 こちらがまた大変クールだなや。…ちょっと狙いすぎなのかもだけど。
・Everything But The Girl - Nothing Left To Lose
今冬シーズンは、特に白味噌×酒粕の消費量がぐっと増えている。ゲストに生姜なぞも召喚すれば立ちどころに冷え切った体が温まるので大変重宝している。ここ最近はオリーブオイルを垂らしてみたり。さらにホットになれるし具材の味も引き立つし、でこちらもなかなかの名バイプレイヤーぶりである。
Television『Last Live In Portland Oregon 1978』(1993年)を。
「Recorded on July 3, 1978 at The Earth Tavern in Portland, Oregon.」とのクレジットあり、2nd作『 Adventure』リリース年のライブ録音と思われるが、 早くも「ラストライブ」 と銘打たれておりバンドの短命ぶりを伺わせて切ない。
私の場合、 かつてTelevisionの音楽に最初に惚れたきっかけはと言うと、 彼らのこのライブ盤であった。
『Last Live In Portland Oregon 1978』(1993年)はいわゆるブートCDであるが、 個人的には同78年のNYでのライブを収めた『The Blow Up』(1982年)よりも先に耳にしたこともあるせいか、 特にその演奏内容にはより思い入れがある。あまり大きな声では言えないけど。
『Marquee Moon』だけでなく『Adventure』 からのライブ演も多く収録されているし、 何と言ってもここに収録されている「Little Johnny Jewel」のキレキレの格好良さたるや… 当時シビれ上がったものである。
スタジオ録音作品では伝わりにくい(と当初は感じていた)、 バンドのライブでの熱量やウネりといったものの魅力に開眼して以 来、一気にスタジオ作にも傾倒したのだった、自分の場合。…実は久しぶりに聴き直すにちょっと暑苦しくも感じるけど。
この度久しぶりに『Marquee Moon』のLPとCDを手に開いてみたところ、 2013年に観に行ったTelevision来阪公演の半券をト レーに挟んだものが出てきた。つい数年前のことに思えるけど、 早10年が軽く経過しており思わず唖然としてしまった。
Tom Verlaine持ち前の端正で艶やかなギター&ボーカルは、 エイジングされていぶし銀の渋みを感じさせつつ、Billy Ficca(Dr.)とFred Smith(Ba.)の、歯切れ良くバウンドする独特のビートを生で聴けて感激であった。改めて『Marquee Moon』を聴いていても、 このズンドコしたドラムとベースによるガレージ感が、 Televisionというバンドを実にパンク・ バンドたらしめているように感じる(この辺りはもしかしたら前任者Richard Hellの名残もあるのかもしれない)。
それにしても『Marquee Moon』(1977年) は改めて不思議な魅力のある作品である。 一聴平面的なのに艶やかにして弾力性のある有機的な置物みたいで… 全てのバランスは整然と行き届いているように感じられる。およそデビュー作らしからぬ、 その落ち着きというか抑制ぶりすらも神秘的に感じられて奥行きの豊かさは今もって 底知れない。ちなみに一方次作『Adventure』 は妙な軽みと明るさを湛えており、こちらもお気に入り作である。
・Television - Venus(de Milo)
The room was so thin between my bones and skin
There stood another person who was a little surprised
To be face to face with a world so alive
『Marquee Moon』屈指の名曲群の中にあって、個人的に一番好きな曲は今ならこれかしら? あるべき位置にあるべきピースが過不足なく収まっているように感じられて、完璧とすら思えてくる稀有なナンバーである。
遂にTom Verlaineまで逝ってしまわれた。享年73歳とのことだった。
Thurston MooreにKevin Shields、J. Mascis… 思えば自分世代のギターヒーロー達はこぞってフェンダー社のジャ ズマスターを弾いていた(かく言う自分も弾いていた時期あり)。 おそらくは若き日の彼らに影響を与えたマスターこそは、T. Verlaineその人に他なるまい。
はたと気が付けば2月に入って今週も金曜日である。今週も1週間お疲れ様でした。
明日は久しぶりのライブである。もはや他人との距離感もすっかり分からなくなって久しいし、何かとざわつきがちなご時世だけど、せっかく頂いた機会なので、なるべく落ち着きを持って取り組みたいものである。