Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

Lick My Decals Off, Baby

 台湾風おでんも3日目を迎えた。冷蔵庫の中でお味はますますしみしみで、鍋の中で具材たちの生態系が互いに歩み寄り尊重し合うことでかつてない調和を見せている。 
 ブリあらと白菜を蒸したものに自家製ドレッシングをかけたもの、長芋の浅漬けfeat.塩こんぶを箸休めに。長芋は糠漬けにも投入したのでこちらの出来上がりも今から楽しみである。
 

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 懸案であったLINE騒動も結局その日のうちに返信を頂き事なきを得た。というのも相手の寛大な対応あってのことだろう。
 私のような出来損ないに関わってくれるような御仁は、よっぽど寛容で辛抱強いと相場が決まっており、これまでそういった周囲の友人知人に支えられてどうにか生き延びているのであった。
 
 大好きなCaptain Beefheart『Lick My Decals Off Baby』(1970年)を久しぶりにオン。その昔ニューヨーク・シティに遊びに行った際に新品で入手した再発盤であるが、当時の値札に12ドルとありしみじみ…15年くらい前にはLP1枚が12ドル程度で購入できてたんだね。今やレコードは高級嗜好品である。
 1曲目冒頭からあふれ出てラストまで駆け抜ける、この名状しがたい意味不明なエナジーの集中砲火を浴び…あーあ何とも胸が空くことであるよ。
 C. Beefheartのアルバムはどれも素晴らしくて甲乙つけがたいが、個人的には特にこの作品を愛聴してきた。例えば著名な『Trout Mask Replica』のような混沌ぶりも好きなのだが、ここではぐっとスカスカでソリッドなアンサンブルが聴けるのが好みだ。
 

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 より剥き身で解像度の高いDon Van Brietの狂気に触れられるというか。そのプリミティブさゆえかブルージーでありながらガレージぽくもあり、今聴くと後のラップやファストコアまで通底するような趣きもある。下手なエナジードリンクよりも元気が出ること請け合いの不朽の名作である。
 
Captain Beefheart & His Magic Band - Lick My Decals Off, Baby

 
 メンバーであるZoot Horn Rollo著の『ルナー・ノーツ』は、リーダーD. V. Brietの現代ならそのカルト宗教の教祖かモラハラ認定スレスレの独裁ぶりが伺える迷著だ。
 …例えば著者に関して言えば、バンドの毎日のハードな練習のためにコミューン的に軟禁されて、運営資金もメンバーの財布はおろか、その家族からもせびっていたという話である(Sun RaやJBなどにもその気はあったようだが)。
 その謎のひたむきさあってのこのサウンドであるので、例えばこれを現代において常人が目指す事は社会的な孤立どころか…最悪の場合は訴訟沙汰まで見えるため、今C. Beefheartのアルバムを聴くという行為は、「ゆめゆめ志す事なかれ」という反面教師的な教訓めいたものをしみじみ感じる。