Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

さよならやっと会えた

 台湾風おでん最終日…名残惜しくも平らげた。とても簡単で美味しくできたので是非ともまた寒くなったら仕込もうと思う。長芋やキュウリ、ミョウガを漬けたものはもはや定番である、適当に切って酢とめんつゆに漬けるだけ。
 

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 仕事後に堀川会議室へ。喫茶ゆすらごも休業がちな昨今では、もはやここが数少ないオアシスというか、周囲の音楽好きな友人との寄り合い場所みたいになっているな…また新しい出会いもあったり。感染症対策にも積極的に取り組んでいるし、そもそもオープンエアで人出もそこそこまばらなのが居心地よい。精力的に場をオーガナイズしてくれている山内弘太氏には頭が下がるというものだ。

 久しぶりの黒田誠二郎氏ソロを長尺で堪能した。サンプラーや多数の楽器等を駆使した音響的なセットで新鮮であった。とはいえ持ち前の情景を想起させるようなストーリーテラーぶりを発揮しており、長尺な分ゆっくり浸ることができた。
 
 mmm氏は3都市をつないだリモート演奏にて稲田氏、山内氏を従えて。こちらも空気を多く含んだ真摯な歌が、飾り気ない温かみをもって響いた。個人的にはリモート演奏時の各パートの音や映像の遅れや音質の見劣り等のストレスはほぼ感じなかった。稲田氏のトライ&エラーにおける改善の賜物なのだろう。
 
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 黒田誠二郎「きつとふいくしよん」(2017年)を久しぶりに聴く。
 京都は七本松に店舗を構える喫茶ゆすらご店主の静かな独白による、シン…としてジン…とくる自主制作10吋盤。 愛する奥さんと猫に囲まれた愛あふれる京町家にて、その喫茶営業のかたわらプライベート録音された10編の歌々がしたためられている。それほど前の作品ではないのに、リリース時点からすでに骨董のような佇まいでもある。
 

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 その大きな猫背とリーチの長い腕手指に抱え込まれたギターとチェロからは、どこか動物の鳴き声のような、声にならない軋みや擦れがしぼり出される。音数は少なくごくシンプルである。大事に奥殿にしまわれた宝物を今うやうやしく取り出すかのように吐き出されていく…そんな印象の歌声とも相まって、最初は引っかき傷やホコリかに見えた小さな欠片が、ふと気がつけば豊かな一筆書きか一枚画にでも見えてくるかの風情が実に奥ゆかしいではないか。
 どこか淋しくて、同時にどこか可笑しみがある…何ともユニークな面構えをした実に味わいある謹製短編集なのであった。
 
僕らは僕らの燃える嫌なにおいも
いまわしいあの部屋の退屈も
ぜんぶがほら、遠くはなやぐ
ほら、遠くはなやぐ
やっと会えた ほら、やっと会えた
 
 早くゆすらごも通常営業に戻って、また独自のチョイスが光る催しやライブミュージック、人々の笑顔に触れたいものである。フムフムとチャオにももっと会いたいしね。