Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

Wind To Dry

 
全世界的に胸が痛むニュースばかりで全く気が滅入る。はたまた個人的にも明るい話題も少ないままに今年も年の瀬を迎えようとしている。
 

そんな晩秋もいよいよ深まりつつある12月初頭、益子のとある民家で開催された謎のフェスティバル「music謎ましましこフェス」に参加してきた。

 

 
喫茶ゆすらごの今冬の関東行脚の機会に、北関東まで足を伸ばすとのことで不肖私もお誘いを頂いて、今年の初夏に我が家に召喚したばかりのシンセを使ったソロセット=「ぬ~ぼ~」で臨むことになった。
 
出たとこ勝負ならぬ出た音勝負、といった趣向にて…たまたま出た音に対してその場で反応することで自分好みの世界を作り出していこう、というシンプルな試み…つまりは当方細かい操縦のおぼつかないドがつくシンセ・ビギナーであるのだが、慣れない運転もまたドギマギ刺激的で大変楽しめた。演奏っていうより観測に近いような…起こってしまった現象との折り合いとか調和を目指す作業というか…何言ってんだか?
是非ともまた引き続き探求していきたい「シンセ道」なのだった。
 

 
会場の山川ファミリー邸は、自然に囲まれた山里の真新しい木造一軒家で、中に入るや中央土間には立派な火鉢が鎮座していた。ロフト作りの2階ともども全体に間仕切りが大胆にぶち抜かれて、広々とした風通しの間取りが実に住み心地良さそうな素敵空間であった。

 

 

時間になると、どこからともなくご近所遠方より好事家のお客様がわらわらとご参集頂いては、ゆるゆるとフェスという名の奇祭がスタートした。
DIYマインド溢るる文字通り手作りの会場の雰囲気も相まって、日本各地に生息する挙動のおかしな(褒め言葉です)面々による挙動のおかしな音楽のつづれ織りが大変美しくて、個人的に感動することしきりだった。
どのアクトも最高にぽつんと孤立しており、独創性こそが最高に素晴らしくて、しばしば胸を躍らせたり、びっくりさせられたり、はたまた目頭を熱くしたり…と何かと感情の起伏が忙しい1日であった。
 
自分が当時20歳くらいの際に2度ほどUKに渡り、地下音楽の祭典「All Tomorow's Parties」なるフェスにいち観客として参加したことがあった。多感な時期におけるその経験は、今でもその後の人生における価値観に大きく影響を及ぼしたものと思っている。
規模は違えど…自分が音楽の現場に求める温度感とはこういうものかもしれない、なんて久しぶりに思い出したような。
 

 
山川ファミリーのホスピタリティも最高で世話になりっぱなしであった。囲炉裏で時間をかけて炊かれたもつ鍋も温まったなや。売り子の3兄妹ちゃんもカワゆすぎて、一緒に遊んでもらったり色々な情報を教えて頂いたりと歓待して頂いた。
ニャオハ、15万円のリザードン、マイキーのダンス…忘れがたし。
 

よう見返したらどさくさに紛れて「お〜いおもちゃ」も一緒に並べとるやんけ…

 

彼ら3人による私のあだ名も時間の変遷とともに、
 
「顔がかわいい人」→「メガネマン」→「生臭坊主」→「生メガネ」
 
とトランスフォームの末に偉大なる進化(退化?)を遂げることとなった。
 
翌日は山川ファミリーとお昼に群馬名物「ひもかわうどん」をご一緒できたけど、その後人懐っこい3兄妹ちゃんとの別離が何とも寂しかったことと言ったら…。
是非とも栃木の山里に生息するソーキュートな山川ファミリーに再会すべく、また近いうちに益子の地を踏みたいものである。
 
 
車をひた走らせてお隣の群馬県まで足を伸ばして伺った、ひもかわうどん(ラーメン?)の人気店「足利麺」。
鶏ガラ醤油ベースのあっさり目のスープが柔らかめの極太平麺にもよく合って、飲酒疲れの胃がしばし優しさに包み込まれた。
 

 

ついでに皆衆で追加にてつついた肉巻き餃子、串カツ、枝豆も丁寧な心配りを感じる手仕事ぶりがいちいち包まれた。休日の駐車場はずっとパンパンで、お客が絶えない理由がよくよく分かった気がするよ。
 
Souled American『Flubber』(1989年)でも久しぶりによ。
1st作『Fe』も同じく愛聴盤であるが、この終始よれよれ蛇行&弛緩した寄る辺なきシカゴ産のアメリカーナ・サウンドが、実にくつろげるでないの。
 

 
当時何故に名門Rough Tradeから、このようなバンドがリリースされるに至ったのか、今となってはその経緯は不明であるが…同時期にはLucinda Williamsのリリースも手掛けたり、80年代後半はよりワールドワイドリリースにも手を広げていたようなので(後期ラフトレ)、その一環だったのだろうか。
このレゲエ全開なアートワークも潔くてタマらない。
 
ボリボリしたリズム隊が最高に有機的であるし、簡素な録音に薄っすらとかかったリバーブ感に仄かな当時NW臭がかろうじてかぎ取れる。
Boxhead Ensembleへの参加やソロ作における幽玄なギターワークが素晴らしいギタリスト=Scott Tumaの、ごく初期のキャリアにおけるシンプル&ロウなギターワークが堪能できることも嬉しい。
 
・Souled American - Wind To Dry

 

ある意味こういった異端なバンドがUK Rough Tradeからリリースされる事実そのものがパンキッシュな出来事であるし、実際この何とも名状し難い独特の温度感こそは、その後の地下オルタナ・カントリー世代に与えた勇気や影響も甚大だったのではないか? なんて思えてくる。
Uncle Tupelo前夜であるし、例えばTFUL282U.S. SaucerとかのAmalliro rec.とかShrimperのリリース群とかSmogとかWill Oldham、Mick TurnerなんかのDrag Cityのリリース、あとあと後期Red Red Meatとか…ふと思いつくままに羅列…別に知らんけど。

 

明日は東京へ戻ってから初めてのライブにして今年最後のライブ、しかもソロセットを予定している。そもそもの元を辿れば、moon face boysとはバンド名でなくて自分のソロ名義に端を発しているので。
今となってはもはや名前なんてどうでもええけど、明日はどうか楽しんで演奏できますやうに。