Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

Personality Crisis

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 例年にも増してなかなか休みボケも抜けないままに3連休に突入したのだった。
 久しぶりに友人知人と直に会って語らったり、という嬉し楽しい機会にも恵まれた連休であったが、それとともに自分の至らなさも目立った。昨年末はひとりで過ごす時間も多くて、いよいよ他人との距離感に対してもますます鈍感になっている実感があるな。
 そもそも日頃より粗相の多い人間であることを自覚すればこそ、ひとりよがりでなくちゃんと相手を尊重せねばね、などと新年早々改めて襟元を正すのだった。
 
 今日も今日とてお鍋でも。シンプルな白味噌仕立てになめこが優しく沁み渡る。ネギは多めで正月の余り物のお餅も入れて。しばし心身が温まった。
 

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 「ノーザン・ソウル」(2014年)、「グッド・ヴァイブレーションズ」(2012年)を立て続けに鑑賞。「ノーザン・ソウル」は70's英北部を舞台にしたノーザンソウル・カルチャーを取り巻く青春を描いた作品。一方「グッド・ヴァイブレーションズ」は70's北アイルランドベルファストにオープンしたレコード店兼レーベルを取り巻く実話をベースにしたお話で、両者ともかかる音楽がいちいちツボなのだった。
 
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 テリー・フーリー(オーナー)がクラブでパンクの素晴らしさに開眼したり、「ノーザン・ソウル」の主人公がソウルにハマっていくシーンなんかワクワク感がぐっと伝わってきて◎である。アメリカともましてロンドンのモッズやパンクカルチャーとも一線を画す当時の郊外の音楽を取り巻く、クラブの描写なども興味深かった。OutcastsやUndertonesといった地元のパンクバンドのライブやレコーディング風景の描写なんかも胸熱くなるものがあり。片やユースクラブ(地域の若者による懇親会みたいなの)で主人公が虎の子のレコードに針を落としては近所のキッズがダンスし始める下りしかり。
 誰もかけていないレコードをかけてやろう、みたいな水面下の攻防によって発祥の地=米国のいわゆるソウルファンクの王道とは一風異なる文脈のダンス、クラブカルチャーの派生を生んだ背景もよく理解できた。当時のカリスマDJが自身の秘蔵レコードの表面にラベルを貼ってアーティスト名を隠していた「Cover Up」と呼んでいたらしく、それを暴くみたいな遊びも初めて知った。まさしくインターネット前夜の嗜みだったのだろう。
 この手の話にはきらびやかな栄光と凋落、成功と挫折も付き物であり、こちらでも多分にもれずドラッグやアルコールなんかで崩壊していく人間関係、破綻していく人生が描かれており…これまた切ないけどだからこそのはかなさが美しくもある。それでも大きなものを失った後にこそ、少しく残った大事なものを個々に胸に秘めては今後の人生を歩んでいくのだろうそのアウトロ(ー)にも、一縷の望みが感じられてじんわり感動が残った。
 
 Sonic Youth & The Pastels『Plays The New York Dolls』7"(2021年)。
 昨年SNS上でThurston Mooreがこちらの7インチを手にニッコリ笑う写真を見かけて、詳細を調べる前に問答無用で入手していた1枚だ。
 

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 Sonic YouthとPastelsによるスプリットでしかも両者New York Dollsのカバー、おまけにアギ(Annabel Wright)によるアートワークともなれば最高の1枚に決まっている、という訳で問答無用で入手した1枚だったけど。
 リリース元のレーベルも特に存じ上げなければ、果たしてどちらも新録ではなく8〜90年代の既発B面曲発掘音源ではあったものの…2021年にこうした形で聴けたことが素直に嬉しいし、はたまた肝心の音楽がやはり最高というより他ない。
 
Sonic Youth - Personality Crisis

 
Personality crisis you got it while it was hot
It's always hot, you know, it's
Frustration, heartache is all you got
Oh, don't you worry
 
 両者の在りし日のN.Y. Dolls愛が燦々とあふれる青春パンキッシュなカバーに思わず胸を締め付けられずにはおれないのだった。こうした(ともすれば)ほころびのある荒削りな演奏をするバンドも現在となっては稀少で、むしろその伸び伸びした眩しさに改めて目を細めてしまう。
 かつての自分は少なくともそうした音楽にとても愛着や自由なんかを感じていたな。ガサガサ、ワサワサしてても別にええんではないか? と。今となっては両バンドとも沈黙して久しい事はつくづく残念であるけど。まぁこの20年でも時代が大きく変わったんだろう。
 

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 バンドも人間関係も付き合いの長さとともに様々な問題が出てくるのが常であるし、そこで何とか折り合いをつけて良好な関係をキープする事ってば本当に難しいな。
 
 そもそも美しいと思える瞬間こそ永遠には続かないものなのだろう…などと月並みなことを考えながらも、新年早々何となく寄る辺のない気分でいる。
 今日も今日とて「Personality Crisis」にさらされている。