Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

You Can Have It All

 
 久しぶりに伏見の街に降り立ってぶらり。
 街なかを縦断する濠川や、川沿いに立ち並んだ酒造はじめ旧い建物は、師走の曇天の下で寒風に吹きさらされてはよりいっそうくすんでおり、何ともタマらない風情であった。
 

 
 黄桜酒造で今年の新酒3種を飲み比べするなど。中でも「生原酒 祝」という旬のお酒が特に自分好みで、キリッとした辛口と後に残る素朴な甘味と香りがなかなかナイスであった。
 お土産にと小島功先生の筆によるソークールな小皿もゲットしてきた。
 
 
 その後ぷらりとインした中書島の小料理屋さんでは、粕汁やあん肝で焼酎のお湯割から始めさせて頂いた。
 店内は蛍光灯が眩しく雑然としており、洒落っ気は皆無である。カウンターでは地元常連客とおっしゃる物静かな女性がおひとりで飲食されていた。オーナー女将は日頃は地域の保護猫活動にも精を出されているそうで、入店するや「猫おるけど大丈夫?」と問われて、実際にこの日も店内では給仕の傍らで6匹の猫たちをお世話されていた。
 女将お一人で切り盛りされるこちらは、手作りのアテがいずれもお安くて美味しい。牛すじ煮込みもホロホロとろとろ肉感であり、聞けば古くからの知り合い筋より特別に高級牛の部位を安価で仕入れているとのこと。ゆりねの炊いたんにはホクホクでほんのり山椒の香りが嬉しかったこういったささやかな街の灯はどうか消えてほしくないものである
 

 
 George McCrae『Rock Your Baby』(1974年)。
 冒頭のヒットナンバー=表題曲から、アルバム全編で多用されるリズムボックスのイントロからして心奪われるゴキゲン盤。
 オリジナル版はT.K. Soundからのリリースで、マイアミ産の陽のサザンソウル色の濃さにも目を細めつつ、そこはかとなく哀愁や愛嬌なんかも感じる大好きな1枚である。
 

 
 発売当時は標題曲「Rock Your Baby」がソウル・チャートでヒットしたらしいけど、自分の世代では、何と言ってもYo La Tengoもカバーした「You Can Have It All」に尽きるのではないか?
 リズムボックスをベースにした振り付きのディスコ・カバーは正にこのアルバムへの愛情をダイレクトに感じさせるし、名作『And Then Nothing Turned Itself Inside Out』(2000年)の中でも絶妙なアクセントとしてひときわ異色作として輝きを放っていた。
 一方原曲では、よりゴツっとしたベースと16ビートでせわしなく刻むハットワークが印象的である。アクの強いポートレートのアートワークに一瞬怯むけど、アルバムを通してイイ曲ばかりであり、何より針を落とす度に稀有なテンションに包まれるレコードだ。
 
・George McCrae - You Can Have It All

 
If you want, want my time
Take it baby
And if you want my last dime
Take it baby
You can have it all
 
 ちなみに奥方は先述のGwen Mccraeで、当時揃ってここ日本でも国内盤もリリースされていたようである。
 同時期にCatよりリリースのデュエット作『Together』(1975年)では、夫妻の息がぴったりの掛け合い(絡み合い)を通して、その個性の拮抗及び仲睦まじさが存分に楽しめる内容だ。
 

 
 そのアートワークよろしく、おのろけぶりに思わず胸熱くなってしまう愛の結晶盤と言えよう。この時期の両者の作品に通じる簡素なプロダクションで、ほっこり多幸感を堪能できて、こちらも併せて大好きな作品だ。
 
・George & Gwen McCrae - You And I Were Made For Each Other

 
 …ついついダブっちゃってたりして。1枚でも濃ゆいのに2枚並ぶと思わず胸焼けしてくる…さしずめ某マリオブラザーズさながらである。
 

 
 金曜日さぁね。お休みなさい。