Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

Little Girl Blue

 
 一つの作品の完成も近づいてくると、だんだん次の新しい曲が作りたくなる。
 「次こそもっと上手にやりたい、できるはず」
 といった毎度おなじみの期待を胸に秘めながら、ここ数日はギターを弾いたり歌詞を書いたりしている。
 世のバンドマンもとい作曲をされる皆々様は、いつどのように曲を書いているんだろう? と考えることがある。
 
 自分の場合は自宅での作業では気が散ってしまい、なかなか腰を落ち着けては書けない習性がある。結局のところまとめ作業は自宅で行わざるをえないのだが、最初の大事なきっかけを得るための発想段階の作業となると…ほどよくざわざわした街なかが望ましい。
 メモを片手に小径や公園なんかをブツブツひとりごちながらうろうろする。並行して長居ができる喫茶店やファミレスなんかも頻繁に利用する。行きつけのコーヒーお替わり自由の某Mスドが潰れてしまったので、ここ最近はもっぱら近所のSイゼリヤに足が向かうことが多い。ひとりでお昼から夕方くらいまで居座るのである。
 
 つい先週末の休日も単身Sイゼリヤで過ごした。エスカルゴのオーブン焼きやアスパラ、アロスティーニ(羊肉串)を肴に赤と白ワインのデカンタを頂きながら。ドリンクバーに炭酸水や無糖のストレートティが常備されているのも嬉しい。あたかもファミレス然としたコーヒーの味だって決して悪くない。
 

 
 そんなジリジリした時間を過ごしながら、とっ散らかした断片を拾い上げたり捨てたりしていく。「今度こそは傑作の予感…」などと、ひとり静かに胸を高鳴らせるひと時こそは、自分にとっての至福時間である。
 その発想力や思い切り、スピード等のパフォーマンスは年々落ちているのかもしれないけど、自分なりには昔より今の方が納得いくものができつつあるとも思っている。
 はて一体世の人々はいつどのように曲を書かれているんだろう?
 
 Nina Simone『Little Girl Blue』(1959年)をば。
 Nina Simone1957年録音のデビュー作である。デビュー作にしてあどけなさはほとんど感じられず、むしろこのどっしりした貫禄と深みである。とはいえ…この作品は、かろうじて初期の彼女の聡明さが率直かつシンプルに伝わってくるようで個人的には愛着が湧く。武装されてないというのか…上手に言葉にはできないけど。
 
 
 N. Simoneの場合、1曲1曲がどうというよりも常に全身音楽家という印象で、演奏そのもののエネルギーに圧倒されてしまう。スタンダードジャズやブルースを歌っても実に聴かせてくれるし、彼女は大学で音楽教育を受けたミュージシャンであるが、そのオリジナルな個性の強さたるや、自分にとってはもはやいちブルーズマンに近い存在だ。何を歌ってもN. Simone色になるというか。
 実際にその昔、N. Simoneの自伝を図書館で借りて読んだ際には、その度重なる不幸や不遇の連続ぶりにページをめくるのがツラくて、最後まで読み切るまでにはこちらも相応のエネルギーが必要だったことをふと思い出した。
 
Nina Simone - Little Girl Blue

 

Sit there and count your fingers
What can you do?
Old girl you're through
Sit there, count your little fingers
Unhappy little girl blue

 
 彼女は毎回どんな面持ちでピアノへと向かっているのだろう? 自分などが想像すべくもないけど、こんなテンションで演奏できたら理想的だなと思うことがある。
 
 今週も早いもので、もう金曜日なんである。
 ますますきな臭くなるばかりのこの世界人類の平和を祈りつつ。
 良い週末をお過ごし下さい。