Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

Velhos Surfistas Querendo Voar 

 

 8月初頭に夏休みを頂いて、単身バカンスにて宮古島へと足を伸ばした。

 すでに6月時点で3泊4日分の宿泊予約まで済ませていたのだが、折しも7月下旬にかけて感染者数は日々急増し出し、一気に越境がはばかられる時期に突入して迷いもしたのだけど。単身者による特に誰に会う予定もない一人旅であることもあり、予定通り渡航を敢行することにした。くれぐれも予防を心がけながらソロソロと忍び足にて。
 
 久しぶりの空港や飛行機の空気は随分懐かしく感じられてワクワクするものだった。行き帰りの機中では「ドライブ・マイ・カー」を鑑賞した。さすがの話題作とあって、長尺ながらも冗長さはなくて終始楽しめた。…とは言え全体を覆う、キザで自己耽溺的な空気感に、個人的に昔から苦手だった村上春樹作品特有のジトッとしたものを感じては、どこか深く引き込まれ切らないものがあった。
 
 初めて訪れる宮古島でまず私を迎え入れてくれたのは、投宿先の宿からほど近いパイナガマビーチに落ちる夕陽の美しさであった。このご時世色々あるけど、何とか無事現地まで辿り着いた安堵感を胸に、オリオンビールを頂きながらひとしきり眺めるサンセットは、あたかも眼前でゆっくりと、ライブで次々に変容していく大きな絵画を鑑賞しているようで飽きることがなかった。
 

 
 翌日は若干の曇り空であったが、日差しが強くなかった分さほど日焼けしなくて済んだのと、今考えると自転車移動がはかどった(終始汗は止まらなかったけど)。
 訪れた与那覇前浜ビーチは若干風もあって波が高く、珊瑚礁も沖合いにあったため、石垣島や沖縄周辺離島のように、ウミガメや熱帯魚にコンニチハしたり、と優雅に海中散歩を楽しむことは叶わなかった。海水はクリアーで海中は見通しがよろしかっただけに若干残念である。次回はちゃんと事前予習の上、別のスポットを狙いたいところである。とは言え大分久しぶりに海中を漂ったり、白い砂浜でボーッと海を眺めているだけでも十分に贅沢な時間なのだった。
 

 
 白砂がサラサラし過ぎていて杭が地面に刺さらない&海風に煽られて直立しない…などと散々な安サンシェードなのだった。荷物置きくらいには機能した。
 その後、来間島へ渡って竜宮城展望台から見下ろした与那覇前浜ビーチは絶景であった。その目と鼻の先にあるカフェ楽園の果実で頂いたマンゴーパフェとオリオンビールの美味しさもハイライトであった。
 

 
 今回レンタサイクルでの移動を選択したのだが、いざフタを開けてみれば、島のあちこちに緩やかなアップダウンが多くて、地味に体力を削られることとなった。2日間(¥1,500/日)チャーターした自転車も、結局2日目は雨に降られたので終日宿に駐輪したままとなった。3日目は晴れたら伊良部大橋を渡る計画であったが、前日の大移動ですでに大分満身創痍であったので、結果温水プール付きのシギラ黄金温泉で終日身体を休められたのはちょうどよかった。
 
 本来自分の旅先での過ごし方としては、観光地でも何でもない街中をあてもなくブラブラしたり、現地の人々の生活感を味わうことを好むため、その点では今回も行く先々で気の赴くままに足を止めては、ゆったり南国の自然や街並みなんかを眺めて周るという旅が堪能できたので、自転車のチョイスもあながち間違いではなかった。
 ただし久しぶりに訪れたビーチに浮き足立ってしまい、レンタサイクルの鍵をポケットにしまったまま海へと猛進〜遊泳してしまい、ハタと気が付いたらポケットから鍵が忽然と姿を消していることに気づいた際には思わず血の気が引いた。
 …結果的に鍵は降車時の自転車に挿さりっぱなしであり、何とか事なきをえたのだけど(京都でもよくやる)。
 
 宮古そばも絶品であった。薄味のカツオ出汁風味のスープにうどん顔負けの太麺がよく合う。沖縄のソーキそば、石垣の八重山そばなんかに似ているけど、何のこちらも捨て難い。同じくお好みでコーレーグースをかけて頂くのがまたタマらない。泡盛もそうだけど内地に戻ればそれほど欲さなくなるのに、現地で頂くとその風土で相まってか、絶妙に美味しく感じられるのは毎度不思議なものである。
 

 
 名残惜しくて帰り路の空港の食堂でも宮古そばを頂いてしまった。遊泳や長距離移動で溜まった疲労のせいだろうか、もずく天だのイカ天だの、果ては旅の終わりに朝からトンカツまで所望してしまった。
 
 民謡酒場も盛況で楽しかったけど、一方地元住民相手にひっそり家族経営している(とおっしゃっていた)居酒屋もナイスであった。月曜日にも関わらず民謡酒場が満席で、偶然空いていたのを見つけて何となく入店したお店だったけど。アイゴ(アイゴの稚魚をスクと呼ぶそう)やアカマチといった地魚や地野菜を使った素朴な島料理を頂きながら泡盛を数種頂いたのだった。何でもオーナーご夫婦の息子さんのお嫁さんは京都の亀岡ご出身とのことで、一家でも何度か京都へ訪れたこともあるそうで。
 

 

 アカマチのマース(塩)煮はシンプルな天然塩味と鷹の爪のピリッとした辛味があっさり美味であった。淡白な魚だけど身がよく締まっていてしっとりした食感がまた何とも泡盛によく合うのだった。
 
 Marcos Valle『Vontade De Rever Você』(1981年)を。その昔はMarcos Valleと言えばやはりガットギター基調とした初期ボッサ作がフェイバリットだったけど、今やこのディスコ期の作品も捨てがたい…というか大好きである。そしてまた夏になると無性に聴きたくなるのが、Marcos Valleの音楽である。実際先日のDJでもオープニングに本アルバムの1曲目「A Paraiba Nao E Chicago」を景気付けにかけてみたり、宮古島での移動中も愛聴したり…と今夏もすでに何かと重宝している。
 

 
 Leon Wareが全面的にプロデュース参加、Chicagoや盟友AzymuthのJosé Roberto Bertramiも数曲で華を添えている。Chicagoなんて昔はオジサン連中が聴くもんだと勝手に決めつけていたし、その印象は今もあんまり変わらないけど。今や自分も立派な中年ということだろう。若い頃は幼く見られがちで、早くオジサンになりたいと思っていたから本懐を遂げているのだろう。全編にゆるく漂う西海岸ムードにはもはや抗うことができない。
 
・Marcos Valle - Velhos Surfistas Querendo Voar 

 

Eu agora vou curtir uma praia, amor
Estou a fim é de pegar uma cor
Tristeza não presta, o Rio é uma festa
E eu não estou a fim de dançar

 
 "Acho que é amor Ou vontade de rever você"と、アルバムタイトル(また会いたい)を盛り込んだ歌い出しから始まるアッパーナンバー=「飛びたい古いサーファー」?(Google直訳)。インスト曲「Campina Grande」も好きだし、そもそもアルバム全編ゴキゲン&サイコーで捨て曲が見当たらない(そればっか)。
 
 民家の門前にはやはりシーサーが左右に鎮座しているお宅が圧倒的に多い。庭先に咲く鮮やかな種々の花々を眺めているだけで島旅の旅情が込み上げてくるというものである。
 

 
 …というわけで久しぶりのソロ・バカンスをしばし満喫しては、ようやく血が通った思いなのだった。今夏の移動を自粛された方も決して少なかろうし、医療の逼迫等を考れば決して旅を奨励するものでは決してないけれど。
 
 今週も金曜日とな? 皆様充実した週末をお過ごし下さい。