Seven by Seven
9/29 起床時に喉に若干の痛みと全身に倦怠感を覚えたため、大事をとって終日テレワークに従事していたのだが、夜半より発熱症状が始まった。翌日近所の発熱外来へと伺ってPCR検査を受診したところ、まんまと悪い予感は的中して「コロナ=陽性」の診断を受ける運びとなった。
一患者にとってはとんだ一大事であるが、そんな中でも医師やスタッフ、薬局の方のフレンドリーで丁寧な対応が印象に残っている。もはや慣れたものなのか腫れ物扱いも一切されず、医療現場のプロフェッショナル魂をかような窮状において大変頼もしく感じられたものである。
「陽性」が発覚するや、体温計と睨めっこしながら布団にくるまってひたすら発汗したおかげか、幸い発熱も38.5℃辺りを境に早々に落ち着いてきていたので、先週の自宅療養期間はテレワークをしながら過ごすことにした。
あいにく単身者の身の上ゆえ、まずは食料調達こそが火急的な課題かに思われたものの、幸いにも近所のスーパーでネットスーパーによるオンラインサービスが利用できることを知り、外出せずして食料を得ることに成功したのだった。豆腐や納豆を中心にストックしたので、何とかサヴァイブできそうな希望が見えてきて、ようやく心落ち着いたのだった。
加えてカメ氏より福入りの宝箱…もとい段ボールが届いた。野菜各種や缶詰やレトルト食品からシャインマスカット、梨等のデザート、小豆島土産までパッキングされており、孤独な闘病生活の身としてはヒトの優しさに触れては精神的にも大分救われたのだった、ありがたや。
その後喉の痛みはだんだんマシになってきたものの、鼻汁が止まらず慢性的に嗅覚が失われたような状態が長く続いたせいか、食べ物を口にしてもどこか味気ない日々が続いたまま現在に至る。今週に入ってようやく味覚が戻ってきたのだけど、あれが果たして世に言うところの「味覚障害」だったのだろうか?
「ブリティッシュベイクオフ」シーズン8は、放送局がBBC Oneからチャンネル4へと変わった都合上、ポール・ハリウッドを除く愛着ある主要キャスト陣が大きく入れ替えとなった経緯があり、それに伴う「これじゃない」感は少なからずあったものの…元より主役は素人ベイカーであるため、事前に懸念したよりは違和感なく楽しむことができた。個別の勝敗にまつわる緊張感はさておいても、この番組独特の温かみあるピースフルな雰囲気は貴重である。テントの外は大体雨模様であり…やはりイギリス産の番組であるなと思うことしきりである。というわけでその後は「ソーイング・ビー」を鑑賞している次第である。
なお最近になって愛聴しているラジオ番組は、「Radiotalk」アプリで毎日配信されている天才ピアニストのお二人による「深夜おでん」である。京都出身のクールな切れ味のツッコミが心地よい竹内氏と、奈良出身で何かと芸達者なますみ氏による関西弁の掛け合いのフローが何とも心和む。天才ピアニストはネタも秀逸であるが、フリートークも面白い。ついぞ先週末の「やすとものどこいこ!?」での客演も光っていたし、「深夜」と銘打ちつつも「お茶の間」向けの愛されキャラのお二人であると思う。1回毎の放送は5分程度と短めだが、日々多忙なスケジュール下で、この日記のような更新頻度は大したものである。
先日Pharaoh Sandersの訃報が飛び込んできた。享年81歳とのことであったが、一方こちらはESP-Diskからリリースされていた、P. Sanders当時20代の初リーダー作である。「Seven By Seven」「 Bethera」というシンプルで印象的なバップ調テーマを基調にした自作の2曲を収録しており、若きP. Sandersの、コシとツヤのあるテナーサックスのブロウが太っとくウネっては血管みたいに駆け巡る様を楽しむことができる。
・Pharaoh Sanders Quintet - Seven by Seven
Ornette ColemanやAlbert Aylerなんかのフリージャズ・ジャイアントを擁するNYのレーベル=ESP-Diskであるが、一方ではSun RaやGodz、Fugsなんかのいわゆる奇人変人たちの巣窟でもあり、自分の周囲でも人気のレーベルでもあった。かつてそんな流れで手にしたこの作品であったが、久しぶりにこうして聴き直してみるに、何とも原始的な生命力が漲っており、かつ終始クールなバンドのリズムワークがまたタマらない。
「7×7」は「49」ですけどもこのタイトルに込められた意味とは? この曲との関連は全然定かでないものの、サンフランシスコの総面積が49マイルで、7×7マイルに収まることから、ご当地ではサンフランシスコ=Seven by Sevenの愛称で呼ばれていた、という一説も目にした。…とは洒落たエピソードだけど、この曲との関連はいかに?
P. Sandersはその後独自スピリチュアル路線をひた走るだけに、この録音に残された、その前夜祭的とも言える、バップとフリーキーとの狭間の粗野な狂騒感に何とも言えずワクワクを禁じ得ない。P. Sandersの生命力あふれるサックス・プレイを聴いてると、病後の心身も何だか理由もなく元気になってくる気がすることであるよ。
R.I.P. Pharaoh Sanders