Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

Little Satchel

 

 GWとの由。空は晴れ渡って外気は暑くも寒くもなく、実に春らしい行楽日和の心地よいご陽気である…が相変わらず黄砂に吹かれてか鼻水は止まらず、頭は朦朧としがちにて低空飛行気味の日々である。大分快方には向かっておるものの。

 
 「Kimchi Pop! Pizza」は、開催2週間ほど前に急遽決まってお誘いを頂いたイベントだったけど、何かと新鮮で充実した内容であった。
 オーガナイザーであるルー氏(Nice Legs)のご人徳によるところが大きいのだが、会場内は在日の外国人の方が多く、インターナショナルな様相を呈していた。
 事前に開始時間や演奏時間も特に告げられることなく、全体にアバウトさが大らかでリラックスできた。ルー氏は我々の演奏に対して好意的に楽しんでくれては声援を飛ばしたり、嬉しい感想を直接熱っぽく伝えてくれたりする。
 

 
 ホストとしてのリップサービスやホスピタリティもあるのだろうけど、それにしても心地よく参加することができた。「1 Free Drink」という表記にしても、例えば「1ドリンク込み」と書かれているより、どこかお得な印象を受けるような。日頃国内での行き届いたブッキングにいつしか慣れてしまった身としては、そうしたちょっとした違いにも新鮮さを覚えたのだった。
 

 
 Nice LegsもTierparkも、DIYインディ・マナーが太く表出しており、それぞれに大変魅力的なステージであった。
 イベントもサウンドも余計なものが省かれたような風通しの良さが感じられた。世のコロナ取り巻く事情も刻々と変化する中で、今後はもっと活発に海外のバンドのサウンドやカルチャーと交わり合える機会が増えたらいいね、と願うばかりである。
 
 新玉ねぎを買いすぎたので、玉ねぎのアチャールを多めに作った。はたまた丸ごと塩胡椒してトマトジュースとチーズとチンするなど。
 今年もそろそろ鍋の季節も終わりを迎えつつあり、一抹の寂しさを覚えるシーズンカムズである。
 

 
 Nora Brown『Long Time To Be Gone』(2022年)を。
 ライブ観覧の際のお土産にと買い求めた本作は、一切オーバーダブ等のないひたすらシンプルなプロダクションが光る。ひたすら彼女の素朴な歌とバンジョーで綴られる小品が並んだ本作は、ライブの晩の満たされたその場の空気感を反芻しながらすでに度々聴き返しており、この春に出逢ったばかりの最新にして、自分の中では早くもクラシックと化しつつある。
 

 
 つい先日、この17歳のバンジョー奏者のライブ演奏を聴くために、四条河原町の都雅都雅なるライブスペースに初めて足を運んだ。
 2オーダー製で、最初の1杯についてはキャッシャーにてオーダー後、追って店員氏が各々の客席まで直接運んで来てくれる、という独特のシステムであった。ちなみに私はハイボール芋焼酎の水割りをオーダーしたのだが、供されたお酒は2杯とも、全体のバランスといい濃さといい実に絶妙であり密かに唸った。
 

 開演時のステージ上での彼女の所作はまだまだあどけないながらも、ひとたびバンジョーを手にすれば、いとも自然かつ静かに速弾きが繰り出されて、いきなりぐっと深みへと引き込まれた。アパラチアン・ルーツを感じさせるトラッドなバンジョー・プレイは大変滑らかで素晴らしく、しばし大いに目と耳を奪われた。そして17歳にしてどこか気だるさのある腰の据わったボーカルがまた素晴らしく、異国の新しい才能に大いにワクワクさせられては、思わずこちらの魂まで浄化されるようだった。

 1曲毎にチューニングを調整していたのも印象的であった。バンジョー自体チューニングが狂いやすい楽器ということもあるだろうが、2本中1本は(MCで耳にした限りでは多分)「1878年製」ととても古いものであることも影響しているのだろう。
 

 
 会場内には同じくJalopy recordsのレーベルメイトである今夜の共演者のFatboy Wilson & Old Viejo Bones、彼女のご両親やご兄弟と思しきブルックリンからのファミリーも帯同しており、さしずめジプシー一座さながらの風情を醸していた。公演終盤では、出演者に加えて日本人のジャグバンドも加えて和やかなセッションのひと幕もありつつ。
 会場内の年齢層は全体に高く、年季の入ったラグタイム・ミュージックラバーのお歴々が集っていたのだろうか? 知り合い等には一切出会わなかったため、終演後は管を巻くことなくそそくさと退散したのだった。
 
・Nora Brown - Little Satchel

 

Under my bed you can set your little satchel
On my head you'll lay your hand
If you'll be my little darling
I will be your little man

 
 たまにはこうして、気の赴くままに自分が一切存じ上げなかった音楽に気まぐれに触れたい宵もある(とは言え自分が知らないだけで、こうしてTiny Desk Concert 等 でも演奏しているということは、多少は知られた音楽家なのだろう)。
 
・Nora Brown - Tiny Desk (Home) Concert(Live)

 
・Nora Brown - Josie-O