Boys Tree

MOON FACE BOYS, mono tone boy, Go to Bed! Records

さよならを追いかけて

 ハマチのお造り、豚肉とナスと新キャベツとの温サラダにはごま油、ポン酢、ナンプラーなどで味付け、大根とミョウガの浅漬け、トムヤムクン風スープはベトナム食材店で入手したスープの素を使用した。心なしかトム感が希薄なような…レモン汁やナンプラーも投入してみたものの今ひとつトムの正解がわからない。来たる初夏にかけて引き続きトムの何たるかを探っていきたい所存である。
 

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 GOFISH『光の速さで佇んで』(2021年)を聴きながら。
 『オーバーオーバー』と並んでSweet Dreams Pressがこの初夏にかけて放つ新作である。 
 1曲目「メメント」の硬質で緊張感あるオープニングにぐっと集中力が結集されて、続く「ダンスを君が」「インディアン・サマー」等のGOFISH節スローナンバーにぐっと掴まれては柔らかく開放されていく。
 アップテンポが楽しい「クレーター」からガットギターによるソロ演「ロックスター」に耳を持っていかれて迎える「さよならを追いかけて」の風通しの良いポップさが心地良いこと。
 「きっといつか」のトラッド調の弦アンサンブルもナイス、冒頭ドラムのフィルインが印象的でビートが歯切れ良い「ペルソナ」は、その曲調とは裏腹に? 誰しもが日常生活の中で演じている役割などについて考えさせられ、中山努氏のピアノ演が渋い「外は雪だよ」のどこか懐かしさすら感じるマイナー調ナンバーも味わい深く。
 ライブをレコードで楽しむという視点を楽しみつつも、この禍中では妙にリアルな哀愁も漂う「ライブアルバム」…この辺りの不思議と今はなき昭和への憧憬を勝手に嗅ぎとってしまう流れも好きである。
 ラストナンバー「そのとき」はノスタルジックなようでいて、同時に永続する余韻の中にある種の未来や希望を感じさせるような、こじんまりとしたソロ小団円によるエンディングがまたしっとりと似つかわしい。
 
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 客演陣が多彩ながらも各々ささやかな彩りを添えており、スパイスのようにピリッとさりげない旨みを各曲に加えているように感じた次第である。かと思えば、例えば藤巻氏のドラムや潮田氏のギターなど、これまでのGofishマナーからすると大胆なアプローチに感じられ、その迷いないサウンドが新鮮であり純粋にカッコイイ。歌やギターの質感、残響等をはじめ、バンド演の奥行きなどもナチュラルかつクリアーに記録されていることも印象的である。
 
 実際に今作を聴く前には、個人的には以前のGofishトリオ編成での、ますます大きな渦を描きつつあったアンサンブルの続きが聴けないことへのロス感があったのも正直なところであった。がしかし一方ではこのコロナ禍中において、日記のようにSNS上で1日1曲の新曲アップを続けていたテライショウタ氏の前向きな創作姿勢を頼もしくも拝見していた。そんな中で不安や期待が入り混じった気分で待ち望んだ新作であったが、果たして素晴らしい仕上がりの作品が届いて一ファンとしては嬉しい限りである。
 
 また一匹で泳ぎ出して新しい海へとたどり着いた新生GOFISHと、それを取り巻く色とりどりの魚の群れが一緒になって深くさらに深くまで潜り込んでは、かつてなかったビビッドな光景に立ち会わせてくれるような…なんて。これまた是非ともラジオヒットでも飛ばして多くの人に届いてほしい作品かと思う。愛すべきSweet Dreams Pressがまた風通しの良いグッジョブな編集&出版をしてくれた。完成おめでとうございます、パチパチのパチ。
 
・GOFISH - さよならを追いかけて

 
出会いは一瞬なのに さよならは永遠に続く
だからずっとずっと 遠くまで
さよなら さよなら
さよならを追いかけて
 
 何気ない日常の中での光の照射に、一期一会の美しさをじんわり伝えくれるような井手健介氏の撮影によるMVも素敵やんである。
 

 

 「言葉がいまはいちばん遠くて」と歌詞にあるように、余白こそが雄弁に語るGOFISHの音楽を前にしては、言葉はただただ野暮でしかなく…そろそろ黙ろうではないか。

 さてと、もう1度光の速さで佇もうかしら?